サイダーにホップ?米ポートランドの新作2種

米オレゴン州のサイダリー「ポートランド・サイダー(Portland Cider Co.)」が、2026年春に向けた高アルコールの「インペリアルサイダー」2種を発表した。通年商品に加わる「インペリアル・ブラックベリー・ライム」と、春季限定の「インペリアル・パッションフルーツ」だ。ビールの話ではない——それでもホップの専門サイトがこのニュースを追うのは、果実の香りを主役に据える「フルーツフォワード」路線が、サイダーにホップの香りを重ねる「ホップサイダー」と地続きのトレンドだからである。
8%級の「インペリアル」2種、片方は通年ラインナップ入り
「インペリアル」は本来インペリアルスタウトのように高アルコールのビールを指す言葉で、サイダーでは一般に8%前後かそれ以上のリッチなタイプを意味する。通常のサイダーが5〜6%台であることを考えれば、飲みごたえは別格だ。
BREWPUBLICの報道によれば、ブラックベリー・ライムはベリーの甘酸っぱさをライムの柑橘感で引き締めた通年商品、パッションフルーツはトロピカルな香りを前面に出した春の限定品。どちらも果実の風味で押し切る設計で、Hazy IPA以降のクラフトビールと同じ方向を向いている。
煮沸しないサイダーには「ドライホッピング」で香りだけを移す
ホップサイダーの製法の核心はドライホッピングにある。サイダーは麦汁のような煮沸工程を持たないため、苦味を引き出すホップの使い方ができない。そこで発酵後の液に2〜4g/L程度のホップを3日前後漬け込み、柑橘やトロピカルフルーツの香り成分だけを移す。苦味はごくわずかしか付かず、リンゴの酸とホップのアロマが同居した軽快な飲み物に仕上がる。甘口のサイダーなら、この穏やかな苦味が甘さの輪郭を整える役割も果たす。
ブラックベリーにはMosaic、パッションフルーツにはNelson Sauvin
今回の2種はホップ不使用だが、もし同じ果実にホップを合わせるなら品種選びは明快だ。ワシントン州ヤキマバレー産のMosaic(アルファ酸11.5〜13.5%)はブルーベリーを思わせるベリー香を持ち、ブラックベリー系との重ね合わせに向く。ライムの柑橘感を増幅したいならCitra(同11〜13%)。パッションフルーツには、ニュージーランド・ネルソン地方生まれのNelson Sauvin(同12〜13%)や、パッションフルーツ香の代名詞とされる豪州産Galaxy(同13〜15%)が定番となる。市販の辛口サイダーにホップペレット2g/Lを3日漬けるだけでも、この相性は自宅で確かめられる。
ビールの外側に広がるホップの出口
米国ではクラフトビール市場の成長鈍化を受けてホップの作付面積の縮小が続き、栽培農家はビール以外の用途を探している。ホップサイダーやノンアルコールのホップウォーターは、その有力な出口だ。フルーツフォワードなインペリアルサイダーが定番化すれば、次は香りの複雑さを競う段階が来る。そのときサイダリーが手を伸ばす先に、ホップがある。
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