今日は実践編だ。冷蔵庫の缶ビールを使って、すぐにできるテクニックを教える。
三度注ぎ — プロの技を家で再現
三度注ぎ という方法がある。サッポロビールが伝統的に推奨する注ぎ方で、これがすごい。
一度目(荒注ぎ): グラスの高い位置から勢いよく注いで、泡をモコモコに立てる。グラスの半分くらいが泡になるイメージだ。ここで大きな泡が炭酸ガスを適度に逃がしてくれる。泡が半分くらいに落ち着くまで 1〜2分 待つ。
二度目(中注ぎ): 泡の下にビールを静かに注ぐ。グラスの8割くらいまで。泡がまた盛り上がるので、落ち着くまで 1〜2分 待つ。この段階で、荒い泡がきめ細かい泡に変わり始めている。
三度目(仕上げ): 最後にそっと注いで、きめ細かいクリーミーな泡のフタを作る。泡がグラスの縁からこんもりと盛り上がるくらいが理想だ。
合計で 約5分 かかる。「ビールに5分もかけるのか?」と思うかもしれないけど、この5分が味を劇的に変える。
なぜ三度注ぎで味が変わるのか
科学的な理由がちゃんとある。
炭酸ガスの調整: 缶ビールは輸送中の品質維持のために、生ビールより炭酸ガスが多めに封入されている。一度目の荒注ぎで余分な炭酸を飛ばすことで、まろやかな口当たりになる。
泡の質の変化: 大きな泡が時間とともに小さく均一な泡に変わる。きめ細かい泡はビールの香りを閉じ込めるフタの役割を果たし、酸化も防いでくれる。プロが注いだ生ビールの泡に近い質感だ。
温度の変化: 注いでいる5分間でビールの温度が少し上がる。第6話で話した通り、少し温度が上がることで麦芽の甘味やホップの香りが引き出される。
もっとシンプルにやるなら
三度注ぎは時間がかかるので、普段使いの方法も紹介しておく。
二度注ぎ: グラスを45度に傾けて静かに注ぎ、7割入ったらグラスを起こして中央に注いで泡を立てる。これだけで缶から直飲みとは段違いの味わいになる。所要時間30秒。
どちらの方法でも、大事なのは グラスが清潔であること。油膜が残っていると泡がすぐに消えて、フタの役割を果たせなくなる。ビール用のグラスは食器用洗剤でしっかり洗い、自然乾燥させよう。
騙されたと思って、今夜やってみてほしい。同じ缶ビールなのに 「え、これ同じビール?」 って思うから。