ビールは「苦い水」じゃない 2 / 10
第2話 2 分で読めます

ホップって何者?

ホップ。名前は聞いたことあるだろ?ビールの原料だってことも、まあ知ってるとは思うけど。

ホップはつる性の植物で、使うのは 毬花(まりはな) と呼ばれる雌花の部分。この毬花を割ると、中に ルプリン という黄色い粉がある。これが魔法の粉なんだよね。

ルプリンの3つの役割

ルプリンには大きく3つの役割がある。

1. 苦味をつける

ルプリンに含まれる アルファ酸 という成分が、煮沸されることで イソアルファ酸 に変わる。これがビールの苦味の正体だ。苦味の強さは IBU(International Bitterness Units)という単位で測る。大手ラガーが15〜20 IBUくらいなのに対して、IPAは40〜70 IBU、ものによっては100を超えるものもある。

2. 香りを生み出す

ルプリンに含まれる精油(テルペン)が、柑橘、花、ハーブ、トロピカルフルーツなど多彩な香りを生み出す。主要なテルペンは ミルセン(ハーバル)、フムレン(ウッディ)、リナロール(フローラル)。品種によってこれらのバランスが異なるから、カスケードはグレープフルーツの香り、シトラはライチの香りと、品種ごとに個性が出る。

3. ビールを守る

ホップには 抗菌作用 がある。グラム陽性菌の増殖を抑え、ビールを腐りにくくする。中世ヨーロッパでは、ホップが使われる前はグルートと呼ばれるハーブミックスで代用していたが、保存性が格段に低かった。ホップが普及したことで、ビールの長距離輸送が可能になったんだ。

ホップの入れ方で味が変わる

醸造における投入タイミングで、ホップの役割は大きく変わる。

ビタリング(煮沸開始時に投入): 60〜90分煮込むことでアルファ酸が異性化し、苦味が最大になる。香りはほぼ飛ぶ。

レイトホッピング(煮沸終了の5〜15分前): 苦味は控えめで、アロマ成分が残りやすい。フレーバー付けに使われる。

ドライホッピング(発酵後に投入): 苦味はつかず、フレッシュな香りだけを引き出す。Hazy IPAで多用される手法だ。冷たい麦汁に漬け込むから、熱で飛びやすいテルペンがそのまま残る。

世界のホップ産地

世界のホップ生産量の約8割を ドイツアメリカ が占めている。ドイツのハラタウ地方は伝統的なノーブルホップの聖地。アメリカのヤキマバレー(ワシントン州)はアメリカンホップの一大産地で、世界のクラフトビール革命を支えている。

俺が初めてホップの毬花を手で潰したとき、あの鮮烈な柑橘の香りに驚いたのを覚えてる。

ホップがなかったら、ビールはただの甘い麦汁だ。ホップがビールをビールにしている——大げさじゃなく、そう言っていい。