ホップ。名前は聞いたことあるだろ?ビールの原料だってことも、まあ知ってるとは思うけど。
ホップはつる性の植物で、使うのは 毬花(まりはな) と呼ばれる雌花の部分。この毬花を割ると、中に ルプリン という黄色い粉がある。これが魔法の粉なんだよね。
ルプリンの3つの役割
ルプリンには大きく3つの役割がある。
1. 苦味をつける
ルプリンに含まれる アルファ酸 という成分が、煮沸されることで イソアルファ酸 に変わる。これがビールの苦味の正体だ。苦味の強さは IBU(International Bitterness Units)という単位で測る。大手ラガーが15〜20 IBUくらいなのに対して、IPAは40〜70 IBU、ものによっては100を超えるものもある。
2. 香りを生み出す
ルプリンに含まれる精油(テルペン)が、柑橘、花、ハーブ、トロピカルフルーツなど多彩な香りを生み出す。主要なテルペンは ミルセン(ハーバル)、フムレン(ウッディ)、リナロール(フローラル)。品種によってこれらのバランスが異なるから、カスケードはグレープフルーツの香り、シトラはライチの香りと、品種ごとに個性が出る。
3. ビールを守る
ホップには 抗菌作用 がある。グラム陽性菌の増殖を抑え、ビールを腐りにくくする。中世ヨーロッパでは、ホップが使われる前はグルートと呼ばれるハーブミックスで代用していたが、保存性が格段に低かった。ホップが普及したことで、ビールの長距離輸送が可能になったんだ。
ホップの入れ方で味が変わる
醸造における投入タイミングで、ホップの役割は大きく変わる。
ビタリング(煮沸開始時に投入): 60〜90分煮込むことでアルファ酸が異性化し、苦味が最大になる。香りはほぼ飛ぶ。
レイトホッピング(煮沸終了の5〜15分前): 苦味は控えめで、アロマ成分が残りやすい。フレーバー付けに使われる。
ドライホッピング(発酵後に投入): 苦味はつかず、フレッシュな香りだけを引き出す。Hazy IPAで多用される手法だ。冷たい麦汁に漬け込むから、熱で飛びやすいテルペンがそのまま残る。
世界のホップ産地
世界のホップ生産量の約8割を ドイツ と アメリカ が占めている。ドイツのハラタウ地方は伝統的なノーブルホップの聖地。アメリカのヤキマバレー(ワシントン州)はアメリカンホップの一大産地で、世界のクラフトビール革命を支えている。
俺が初めてホップの毬花を手で潰したとき、あの鮮烈な柑橘の香りに驚いたのを覚えてる。
ホップがなかったら、ビールはただの甘い麦汁だ。ホップがビールをビールにしている——大げさじゃなく、そう言っていい。