ビールは「苦い水」じゃない 3 / 10
第3話 2 分で読めます

エールとラガー、2つの世界

世界中のビールは、大きく分けて エールラガー の2つに分類できる。知ってた?

違いはシンプルで、酵母と発酵温度 だ。

エール — 華やかな香りの世界

エールは 上面発酵酵母(Saccharomyces cerevisiae) を使い、15〜25℃くらいの比較的高い温度で発酵させる。発酵期間は1〜2週間と短め。高温発酵によってエステルやフェノールといった副産物が多く生まれ、フルーティーで香り豊かな味わいになりやすい。

エールの歴史はラガーよりずっと古い。紀元前3000年ごろのメソポタミアで作られていたビールも、自然界の酵母を使った事実上のエールだった。IPA、ペールエール、スタウト、ヴァイツェン、ベルジャンエール...クラフトビールの華やかな世界は、ほぼエールの領域だ。

代表的なスタイルをいくつか挙げよう。

ペールエール: ホップの苦味と麦芽の甘味のバランスが良い。入門に最適。アルコール度数4.5〜5.5%。

IPA: ホップを大量に使った苦味と香りの爆弾。アルコール度数6〜7.5%。アメリカンIPAはシトラスやトロピカルな香りが特徴。

スタウト: ローストした麦芽を使った黒ビール。コーヒーやチョコレートの風味。ギネスが代表格で、意外にもアルコール度数は4.2%と軽め。

ヴァイツェン: 小麦麦芽を50%以上使ったドイツのビール。バナナとクローブの香りがする。ホップの苦味はほとんどなく、ビール初心者にも飲みやすい。

ラガー — キレと喉越しの世界

ラガーは 下面発酵酵母(Saccharomyces pastorianus) を使い、5〜15℃の低温でじっくり発酵させる。発酵期間は4〜8週間と長い。「ラガー」の語源はドイツ語の「lagern(貯蔵する)」だ。低温発酵のおかげで副産物が少なく、クリーンでスッキリした味わいになる。

ラガーの誕生は15世紀のバイエルン地方。冬の低温環境で偶然生まれた醸造法だった。冷凍技術の発達で年中生産できるようになると、世界中に広がった。現在、世界で消費されるビールの約 9割がラガー だ。

日本の大手ビール——アサヒスーパードライ、キリン一番搾り、サッポロ黒ラベル、サントリープレミアムモルツ——はほぼ全部ラガーの一種である ピルスナー だ。

君が知っている「ビールの味」は

つまり、君が「ビールの味」だと思っていたものは、実は「ラガーの味」かもしれない。世界のビアスタイルの地図で言えば、ほんの一角しか見ていない状態だ。

エールの世界に足を踏み入れると、ビールの印象がガラッと変わるよ。まずはペールエールかヴァイツェンあたりから試してみるのがおすすめだ。まあ、焦らなくていい。一歩ずつ行こう。