シトラ・ネルソンソーヴィン2026収穫レポート
2026年、米国ヤキマバレーのホップ作付面積が約2万5千ヘクタールに達する見通しだ。前年比3%の拡大で、世界最大の産地として改めてその規模を見せつける形となる。同時期、南半球のニュージーランドでは2〜3月の収穫がほぼ完了し、人気品種の品質は良好との報告が届いている。
ヤキマ2.5万haの内訳:シトラ・モザイク・ストラータが長期契約を独占
拡大を引っ張るのは三品種——シトラ(Citra)、モザイク(Mosaic)、ストラータ(Strata)だ。
シトラはアルファ酸11〜13%を持ち、グレープフルーツや青マンゴーを思わせる柑橘系アロマで現在のアメリカンIPAを象徴する存在。モザイクも同じくアルファ酸11〜13%で、熱帯フルーツ・ブルーベリー・パイン系の複雑な香りを出す。ストラータはアルファ酸9〜12%で、フレッシュな苺や情熱果実(パッションフルーツ)のキャラクターが特徴で、ヘイジーIPAやDDH IPA(ダブルドライホッピングIPA)の主力原料として長期供給契約が相次いでいる。
これら三品種は市場価値が高い分、ブルワリーが数年先まで契約を抑えにくる傾向があり、スポット市場に出回る量は慢性的に少ない。
水不足が収量を左右:7月の降水量がすべてを決める
ヤキマバレーのホップ栽培は灌漑(かんがい)頼みで、ヤキマ川の夏場流量低下が近年の懸念材料だ。収量予測は前年並みだが、7月の降水次第で数パーセントの増減が生じる。作付面積3%拡大が収穫量に直結するかどうかは、最終的に夏の天候が決める。
ハラタウのフレーバーホップ拡大と2025年晩霜の余波
ドイツ・バイエルン州のハラタウ地方では、マンダリナバーバリア(Mandarina Bavaria)とハラタウブラン(Hallertau Blanc)の栽培面積が拡大している。前者はタンジェリン(温州みかんに近い柑橘)系の明るい香り、後者はソーヴィニヨン・ブランを思わせるグースベリー・白ぶどう系のニュアンスが特徴だ。ケルシュやヴァイツェンといったドイツ伝統スタイルはもちろん、現代的なクラフトラガーやセゾンにも積極的に使われている。
ただし2025年春の遅霜が一部農園に被害を与えており、根の活力が回復するまでには通常1〜2シーズンを要する。2026年産では品質や収量にやや均一性を欠くロットが混在する可能性があり、バッチ単位での品質確認が例年以上に重要になる。
NZ産ネクタロン・ネルソンソーヴィン:白桃とワイン香が2月完熟
南半球のニュージーランドは北半球とは逆の農業カレンダーを持ち、2026年の収穫は2〜3月にほぼ完了している。
ネクタロン(Nectaron)はアルファ酸約10%、白桃・パイナップルを想起させるジューシーなアロマが持ち味だ。ヘイジーIPAや果実系セゾンとの相性が特に際立ち、ドライホップで使うとジュースのような口当たりを引き出せる。ネルソン・ソーヴィン(Nelson Sauvin)はアルファ酸12〜13%で、品種名の由来通りソーヴィニヨン・ブランに近いワイン感のある香りが他品種には出せない独自の存在感を放つ。ニュージーランドIPAを定義した品種であり、ペールエールやビターとも組み合わせやすい。
スポット市場は高止まり:早期契約が唯一の現実的な防衛策
世界全体の需給は安定しており、2026年に市場規模での大幅な価格高騰は見込まれていない。しかしシトラやモザイクといった人気アロマ品種のスポット市場では、引き続きプレミアム(割増価格)が続く構造が定着しつつある。大手ブルワリーが数年単位の長期契約で市場在庫を押さえることで、スポットに出回る量が絞られているのが根本的な原因だ。
小規模ブルワリーや個人醸造家にとって最も現実的な対応は、1〜2年先の使用量を早めに見積もって契約を結ぶことだ。スポット調達を続けるほど価格変動リスクを全額負担することになる。今シーズンの動向はその構造を再確認させるものとなっている。
NZでは複数の新品種が試験栽培段階にあり、数年以内に市場投入される見込みだ。ネクタロン以降の新品種がどんな香りを持つか——その答えが出揃う頃には、世界のホップ地図がまたひとつ塗り替わるかもしれない。
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出典
- BarthHaas: 世界のホップ生産統計と市場動向